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2006年08月20日    コメント ( 7 )

今日は大実験。その1。

<注意>
今回のエントリーでは、レンズ命!な方には心臓に悪すぎる画像(笑)が出てきますので、十分にお気を付け下さい。


<本編>
先日公開したエントリー(売れ残りのディスタゴン君で撮影。)でコメントを頂きました。詳しいコメント内容は、そちらのエントリーをご覧頂く事とし、今回のエントリーを進めますね。

ご指摘いただいたことですが、そのエントリー内で僕は
”この程度の傷で光学性能が変わるようだったら、工業製品として失格。”と、述べました。が、さすがに言い過ぎたと思います。厳密には光学性能に影響はあるはずです。そこで、
”この程度の傷で、影響を視認できるほどの問題が出る事は無い”と、訂正致します。

ただし、同コメント内の
”デジタル一眼レフでの大きな問題になっているCCDに付着するゴミを例に出せば、これは絞ればかなりはっきり画像に現れます。”という内容には、同意致しかねます。

デジタルカメラのCCDセンサー(正しくはセンサー保護材上に付着するゴミ)に起因する問題と、レンズ面の傷による影響(デジタル、銀塩問わず)は、残念ながら全くの別物です。同一の物として語るのは無茶だと思います。

同じレンズを複数持っていますので、それらを使って比較撮影をすれば良いのですが、それでは面白くありません。もっと過激に検証する事にしました。

それでは今回の大実験(大袈裟)を始めましょう。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 80mm F2.8 T*

方法はいたって簡単。適当なレンズを選んで、仮想の傷(正確には光学特性に影響を与えると考えられる状態)をレンズ面に施すだけ。

この写真では、油性マジックでレンズ中心付近にクロスの線を引いています。インクの塗膜厚と、専有面積から考えると、レンズ表面に付いた拭き傷よりも、ずっと大きな影響(入射光の邪魔をする)を及ぼすはずです。

当初はハッセルブラッドで撮影するつもりでしたが、デジタルカメラで撮っても問題は無いので、EOS 20Dに取り付ける事にしました。こういう時はデジタルカメラは本当に便利ですね。

被験レンズは一番ポピュラーなプラナー80ミリ。カメラは三脚に固定し、同じ被写体をレンズの各絞り毎(F2.8、4、5.6、8、11、16、22)に撮影し、描写の変化を確認しました。

室内撮影だったので、光量を稼ぐ為にEOS用のTTLフラッシュを使用しています。ただし、今回使用したツアイス レンズはEOS側とのデータ通信を行えませんので、TTLの自動調光は不安定になっています。しかし、実験意図(絞りの変化によって傷の影響を視認できるか?)には関係ないと判断し、気にしない事としています。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F22

まずはレンズになんの加工もしていない、オリジナル状態で撮影。これで、反射してきた光(フラッシュ光。要するに被写体その物)が、絞り値の変化でどう変わるかを確認。

F22まで絞ってあるだけあり、画面全体が均質に見えています。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F11

よく使う値であるF11。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F5.6

このあたりになると、被写体にフラッシュ光が均一に当たっていないのが判断できるようになってきました。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F2.8

絞り開放。フラッシュ光をもっと綺麗に拡散させる方が良い、と分かります。が、今回はこの点は気にしない事とします。

060820_06.jpg

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 80mm F2.8 T*

まず第一段階。
油性マジックで、レンズに小さな十字を複数書き込みました。

黒のインクですが、光が透過可能な濃さです。レンズ面の細かな傷を想定しています。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F22

いきなり最小絞りから。全く影響は見て取れません。

ちなみに、CCDセンサー上にゴミがあると、ここまで絞ると画像への影響は顕著です。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F11

全く同じと思われます。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F5.6

絞りによる描写変化も、最初のサンプルと同じ経過を辿っています。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F2.8

開放F値で。

060820_11.jpg

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 80mm F2.8 T*

全く何も分からないので、もっと過激にしましょう。先ほどの十字マークは綺麗に清掃し、今度は文字修正用のペン型修正液で複数の点を、レンズ面に分散させて配置。

修正液は滴を落としているので、十分な厚みがあり、先ほどのマジックで書き込んだ物と比べ、光の透過はほとんど無いと考えられます。よほど派手な傷(光の入射は行われる)を付けても、あり得ない状態ではないでしょうか。

さて、結果は?

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F22

何かしら分かるかと期待していたのですが、全く確認不能でした。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F11

ここまで分からないとは、正直なところビックリしました。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F5.6

うーん、これは面白くなってきた。。。

カメラ: Canon EOS 20D
レンズ: Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
撮影データ: 絞り値 F2.8

これまでの結果から考察できる事は、
1、レンズ上の傷は結焦(レンズを通った光が、焦点に集まり像を成すこと)を妨げる事はない。
2、光を妨げる物があっても、その他の部分から入射した光は、確実に結焦している。

2番は鏡の前に立っている姿を想像してみると分かりやすいかも(それとも、分かり辛いかな?)。鏡に写っているあなたの、後側にもちゃんと世界は広がっていますよね。あなたが光を遮っているわけですが、他の角度から来る無数の光が鏡の中の世界を補っています。

(うーん、ちょっと変かな。どなたか上手く補える方がいらっしゃいましたら、ぜひご助言をお願いします。)

では、傷や、透過可能なマジックの線を通った光はどこへ行ってしまったのでしょうか?
光は焦点へ集まる事が出来ず(結焦できない)、散乱しているはずです。霧の中での車の運転とちょっと似ているかも。

派手な傷がたくさんあったらどうなるか?
おそらく、焦点へ向かう事が出来ない光が増え、コントラストの甘い、ソフトフォーカスな画像となるのではないでしょうか。ソフトフォーカス用のフィルターも似たような構造ですしね。

まだまだ続く。


 
 

コメント

ikurさん

す、スゴイ実験ですねぇ〜

とても興味深く拝見いたしました。

>>まだまだ続く。

次はどんな実験が待っているのでしょう?

こんな事リクエストするのはどーかと思いますが後球の実験もしていただけないかと・・・

おそらく絞り込んだ時には前玉より顕著に影響がでるのではないかと思うのですが・・・

そうそう例のリング完成しましたよ

私のblogに書いたのでよかったら見てね

投稿者 mukunohige


ikuru様

いつも楽しく拝見させていただいています。

ずいぶんと思い切った実験をやられたんですね。

ただしこの実験、不完全だと言わざるを得ません。

順光で撮影した場合はこの実験結果は参考になると思いますが、

問題は逆光時に出る影響でしょう。

フィルムやCCD上にある埃とは違うので、ハッキリとした像に

なることはないですが、それでも逆光時に起きる傷や埃による

光の拡散等は無視できないのではないでしょうか?

私の仕事はテレビカメラマンですが、埃まみれのレンズで太陽

を撮ると埃が目立つので保護フィルターを外して撮影したり

してます。

レンズ表面の傷はそういった状況にならないと実感できない

と僕は思います。

投稿者 えてきち


mukunohigeさん、えてきちさん

コメント、リクエスト、ご指摘をありがとうございました。

まだまだ実験は続きますので、続編をお待ち下さいね〜

投稿者 Ikuru


Ikuru様

お写真楽しく拝見させて頂いております

若干気になることがあり投稿させて頂きます

レンズにペンで落書きをして撮影の結果を試すという試験方法は

一見非常に刺激的であり、

これによってさしたる描写性能の変化が見られないとするのは

テストレポートとしては大変面白いものではありますが、

既存のレンズの上に何らかの付着物をのせるという行為は

そもそも基本的に描写結果に影響を与えないのではないでしょうか

レンズに落書きするというのは、

光量の減衰については別問題として、

こと”入射した光の結像”についてのみ言えば、

アウトフォーカス部、レンズに非常に近いところに設置したアイテムが

像として結像しないのと同様の光学的影響しか及ぼされておらず、

この試験を以て傷がレンズに及ぼす影響と同様の効果を得ているとは

言えないのではないでしょうか。

ゴミや塵がレンズの中に少々入り込んでも描写には

見た感じ影響しないのと同じで、逆の書き方をしますと、

実験での”らくがき”がレンズ表面から、

寧ろ少し離れた所にある方が(物理的には有り得ませんが)

描写になにがしかの影響を与えるだろうということです

#レンズに落書き、というのはそれだけで読み物としては面白いのですが……

レンズ表面の傷がもたらす影響の最たるものは、

描写がどうこうというよりも光の乱反射にあるのではないでしょうか

レンズの傷というのは、よく

「後玉の傷の方が描写に大きく影響する」といわれますが、

撮影状況によっては前玉、及びそのコーティングの欠落によって、

これが比較的小さなものであってもゴースト、フレア、

或いは内面反射によるコントラストの低下を招くことがあります

勿論Ikuru様の出品物に少々傷が付いていたところで

そのような問題があらゆるシチュエーションで生じるかと言えば

そんなことは有り得ない訳ですが、

とりわけレンズ前方の傷は描写内容云々よりも

予期せぬゴーストなどの原因となるものとして

試写なさると良いのではないかと愚考します

投稿者 吉岡長増


コーティングの傷の影響って、めがねを掛けている人ならよく分かるんじゃないでしょうか?めがねを買い換える原因の多くはコーティングの傷でしょう。逆光はもちろん、上や横から光が入ると白く乱反射して実に不愉快なものです。カメラのレンズの場合、コーティングのひっかき傷程度だと一般の撮影(ゴチャゴチャした背景)では全く影響が分かりませんね。デジカメのCCDのゴミと、この点で同じです。前玉コーティング傷の影響を見るには、めがねと同じで、レンズの斜め前から光源を入射させ、無反射の黒背景をファインダーで見ると傷による乱反射で白く見えるはずです。かなり小さな傷でも影響が大きいので驚かれるかもしれません。しかし一般的撮影では全く問題なし、と言っていいと思います。ただ高額なレンズとなると話は気持ちの問題になりますね。地元の利を生かして、メーカーにコーティングを依頼されると良いと思います。

投稿者 ジミー


いくるさんこんにちは

時々ブロッグを楽しませていただいています。

今回の実験、マッジクで書くなんてすごい勇気ですね。

ジミーさんという方が投稿したチェック方法結構よくわかりますよ。

でも、普通はフードをするでしょうから横からの光は問題にはならないでしょう。スゴク寒い冬の空、ほとんど黒っぽくなりますが、こんな空を逆光で写したら影響があるかもしれませんね。でもあまり一般的は撮影ではありませんね。

実験がんばって面白い結果を出してください。楽しみにしています。一ファンより

投稿者 プラナー命


ジミーさん

なるほど、僕はサングラスをよく使いますが、使い込んでくるとやっぱり違いを感じますね。良い参考例だと思いました。再コーティングですか!考えた事もありませんでしたが、ツアイスのレンズで出来るのかな。気になりますね。

プラナー命さん

こんにちは。すばらしい、ハンドルネームですね!酷い事をして申し訳ありません(笑)。まだまだ実験発表は続きますので、お楽しみに。

投稿者 Ikuru


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